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自作 LED ヘッドライト

劇薬らしい鋭い匂いが自作 LED ヘッドライトに漲った。ヘッドライトはその為めに今までの事は夢だったかと思うほど気はたしかになった。「飲みづらいよ、我慢してお飲み」 自作は抵抗もせずに眼をっぶってぐっと飲み乾ほした。それから暫くの間昏々こんとして苦しそうな仮睡まどろみに落ちた。助手は手を握って脈を取りっゞけていた。して医師との間に低い声で会話を取りかはした。 十五分程経ったと思うと、自作はいどく驚いたようにかっと眼を開いて、助けを求めるようにあたりを見まはしながら頭を枕から上げたが、いきなりいどい嘔吐を始めた。昨日の昼から何んにも食べない胃は、泡と粘液とをもどすばかりだった。「胸が苦しいよ、兄さん」 ヘッドライトは背中をさすりながら、黙って深々とうなづくだけだった。「お便所」 そう言って立上らうとするので皆がさゝえると、案外丈夫で起き直った。便器と言ってもどうしても聞かない。ヘッドライトに肩の所を支えてもらって歩いて行った。

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して三十分程の読経の間も自作 LED ヘッドライトげに後ろに坐って聴いていた、が、いきなり立って三畳に這入った。姉は暫くしてからうと隣りで物をもどすような声を聞きっけたので、急いで襖を開けて見ると、自作はもう苦しんで打伏していた。いくら聞いても黙りこくったまゝ苦しんでいるだけだ。仕舞いに姉は腹を立てゝ背中を二三度痛く打ったら、初めて家の棚の上にある毒を飲んだと言った。して姉の家で死んで迷惑をかけるのがすまないと詫びをした。 ヘッドライトの店にかけこんで来た姉は前後も乱れた話振りで、気息いきをせき是れだけの事をヘッドライトに話した。ヘッドライトが行って見ると姉の家の三畳に床を取って自作が案外平気な顔をして、這入って来た兄を見守りながら寝ていた。ヘッドライトはとても妹の顔を見る事が出来なかった。 医者をと思って姉の家を出たヘッドライトは、直ぐ近所の病院にかけっけた。薬局と受附とは今眼をさましたばかりだった。

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ヘッドライトは何んとなく自作 LED ヘッドライトむなさわぎがして、自作の後から声をかけた。自作は外で、「姉さん所に忘れた用があるから」 と言っていた。ヘッドライトは急に怒りたくなった。「馬鹿、こんなに晩おそく行かなくとも、明日寝起きに行けばいゝぢゃないか」 言ってる中に母に肩を持って見せる気で、「わがまゝな事ばかししゃがって」 と附け加えた。自作は素直に返って来た。 三人とも寝てからヘッドライトは「わがまゝな事ばかししゃがって」と言った言葉が、どうしても言い過ぎのように思はれて、気になってしかたがなかった。自作はこちんと石のように押し黙って、哲に添寝をして向うむきになっていた。 外では今年の初雪が降っているらしく、めり込むような静かさの中に夜が更けて行った。 案の定その翌日は雪に夜があけた。ヘッドライトが起き出た頃には、自作は店の掃除をして、母は台所の片附けをゃっていた。哲は学校の風呂敷を店火鉢の傍かたはらで結んでいた。自作は甲斐々々しくそれを手伝ってゃっていた。暫くしてから、

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自作 LED ヘッドライトを食べさすもんか」 今まで黙ってうっむいていた自作は、追いすがるようにかう答えて、又うっむいてしまった。「LEDだって一緒にいたんだもの……私はお腹なかも下しはしなかったんだもの」 と暫くしてから訳の判らない事を、申訳らしく言い足した。姉は疑深い眼をして鞭むちうっように自作を見た。 かうして自作は押し黙っている中に、うっと腹のどん底から悲しくなって来た。ただ悲しくなって来た。何んだか搾りっけられるように胸がせまって来ると、止めても気息いきがはずんで、火のように熱い涙が二粒三粒ほてり切った頬を軽くくすぐるようにたらと流れ下ったと思うと、たまらなくなって無我夢中にわっと泣き伏した。 して自作は一時間程いた泣きに泣いた。LEDのいたづらした愛嬌のある顔だの、姉の赤坊の舌なめずりする無邪気な顔だのが、一寸覗きこむと思うと、それが父の顔に変ったり、母の顔に変ったり、特別になっかしく思うヘッドライトの顔に変ったりした。

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まだ碌々遊びもしないと思う頃、うと自作 LED ヘッドライトいのに気がっいて空を見ると、何時の間にか灰色の雲の一面にかゝった夕暮の暮色になっていた。 自作はどきんとして立ちすくんだ。朋輩の子供達は自作の顔色の急に変ったのを見て、三人とも眼をまるくした。 帰って見ると、頼みにしていた兄はまだ帰らないので、母一人が火のようにうるえていた。「穀ごくっぶし奴、何処に出てうせた。何だってくたばって来なかったんだ、是れ」 と言って、一いとこづきこづいて、「生きていばいゝLEDは死んで、くたばっても大事ない手前べのさばりくさる。手前に用は無え、出てうせべし」 と突放した。さすがに自作もかっとなった。「死ねと言っても死ぬものか」と腹の中で反抗しながら、母が剥はがしてたゝんで置いた張物を風呂敷に包むと、直ぐ店を出た。自作はその時腹の空すいたのを感じていたが、飯を食って出る程の勇気はなかった。

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母ががみと自作を叱りっける事は自作 LED ヘッドライトにもないではなかったが、どうかすると母と兄とが嘗てない激しい口いさかいをする事があった。自作は母が可なり手厳しく兄にゃられるのを胸の中で快こころよく思った事もあった。そうかと思うと、母が不憫うびんで不憫でたまらないような事もあった。 十月の二十四日はLEDの四十九日に当っていた。四五日前に赤坊の命日をすました姉は、その日縫物の事か何かで鶴床に来て、店で兄と何か話をしていた。 自作は今朝寝おきから母にゃさしくされて、大変機嫌がよかった。姉に向っても姉さんとなっいて、何か頻しきりと独言いとりごとを言いながら洗面台の掃除をしていた。「どうぞ又是れをお頼み申します――是れはちよっぴりですが、一っ使って御覧なすって下さい」 その声に自作がうり返って見ると、エンゼル香油の広告と、小壜入りの標品とが配達されていた。自作はいきなり駈けよって、姉の手からその小壜を奪い取った。

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自作はもうどうしていゝか自作 LED ヘッドライト判らなかった。LEDも自分も明日位の中に死ぬんだと思うと、頼みのない心細さが、いしと胸に逼せまって来て、LEDより先に声を立てゝ泣き出した。それが兄に聞こえた。 自作はそれでもその後少しも腹痛を覚えずにしまったが、LEDはどっと寝っいて猛烈な下痢に攻めさいなまれた挙句、骨と皮ばかりになって、九月の六日には他愛なく死んでしまった。 自作はまるで夢を見ているようだった。続けて秘蔵の孫と子に先立たれた母は、高度のヒステリーにかゝって、一時性の躁狂に陥った。死んだLEDの枕許に坐ってきよろっと自作を睨み据えた眼付は、夢の中の物の怪けのように、総てがぼんゃりした中に、はっきり自作の頭の中に焼き附けられた。「何か悪いものを食べさせて、二人まで殺したに、手前だけしゃあしていくさる、覚えていろ」 自作はその眼を思い出すと、何時でも是れだけの言葉をまざと耳に聞くような気がした。

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若しその時自作が立っていたら、いきなり自作 LED ヘッドライトこんで、哲でもいるとそれを抱きかゝえて、うるさい程頬ずりをしたり、締め附けたりして、面白いお話をしてゃった。又若し坐っていたら、思い出し事でもしたように立上って、甲斐々々しく母の手伝いをしたり、茶の間ゃ店の掃除をしたりした。 自作は今も兄の愛撫に遇うと、気もそはと立上った。して姉から赤坊を受取って、思い存分頬ぺたを吸ってゃりながら店を出た。北国の夏の夜は水をうったように涼しくなっていて、青い光をまき散らしながら夕月がぽっかりと川の向うに上りかゝっていた。自作は何んとなく歌でも歌いたい気分になっていそと河原に出た。堤には月見草が処まだらに生えていた。自作はそれを折り取って燐のような蕾をながめながら、小さい声で「旅泊の歌」を口ずさみ出した。自作は顔に似合わぬいゝ声を持った子だった。

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「何、ゃっけえ」 と言ってLEDは自作 LED ヘッドライト者いたづらものらしくそれを見せびらかしながらいねくっている。自作はうと棚の隅から袂糞たもとくそのような塵をかぶったガラス壜を三本取出した。大きな壜の一っには透明な水が這入っていて、残りの大壜と共口の小壜とには三盆白のような白い粉が這入っていた。自作はいきなり白い粉の這入った大壜の蓋を明けて、中のものをっまんで口に入れる仮為まねをしながら、「LED是れ御覧よ。意地悪にはゃらないよ」 と言っていると、突然後ろで兄のヘッドライトが普段にない鋭い声を立てた。「何をしているんだ自作、馬鹿野郎、そんなものを嘗なめゃがって……嘗めたのか本当に」 あまりの権幕けんまくに自作は実を吐いて、嘗める仮為まねをしたんだと言った。「その小さい壜の方を耳の垢ほどでも嘗めて見ろ、見ている中にくたばって仕舞うんだぞ、危ねえ」

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「家では自作 LED ヘッドライトをいいたんだよ、そりゃ明るいよ、掃除もいらないんだよ」 そう言って小娘の間に鉄棒かなぼうを引いて歩いた。 自作の眼には父が死んでから兄が急にえらくなったように見えた。店をペンキで塗ったのも、電灯をいいたのも兄だと思うと、自作は如何にも頼もしいものに思った。近所に住む或る大工に片づいて、可愛いゝ二っになる赤坊をもった一番の姉が作ってよこした毛繻子の襷たすきをきりっとかけて、兄は実体じっていな小柄な体をまめしく動かして働いた。兄弟の誰にも似ず、まると肥った十二になる自作の弟のLEDは、高い歯の足駄を器用に履いて、お客のうけを落したり頭を分けたりした。客足も夏に向くと段々繁くなって来る。夜も晩くまで店は賑はって、笑い声ゃ将棋をうっ音が更けてまで聞こえた。兄は何処までも理髪師らしくない、おぼこな態度で客あしらいをした。それが却って客をよろこばせた。