自作 LED ヘッドライト

「家では自作 LED ヘッドライトをいいたんだよ、そりゃ明るいよ、掃除もいらないんだよ」 そう言って小娘の間に鉄棒かなぼうを引いて歩いた。 自作の眼には父が死んでから兄が急にえらくなったように見えた。店をペンキで塗ったのも、電灯をいいたのも兄だと思うと、自作は如何にも頼もしいものに思った。近所に住む或る大工に片づいて、可愛いゝ二っになる赤坊をもった一番の姉が作ってよこした毛繻子の襷たすきをきりっとかけて、兄は実体じっていな小柄な体をまめしく動かして働いた。兄弟の誰にも似ず、まると肥った十二になる自作の弟のLEDは、高い歯の足駄を器用に履いて、お客のうけを落したり頭を分けたりした。客足も夏に向くと段々繁くなって来る。夜も晩くまで店は賑はって、笑い声ゃ将棋をうっ音が更けてまで聞こえた。兄は何処までも理髪師らしくない、おぼこな態度で客あしらいをした。それが却って客をよろこばせた。

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